運慶が生きていた理由
運慶作と見られる仏像がクリスティーズに競売にかけられて宗教団体に落札されたとのこと。この仏像が紆余曲折の末海外オークションに出品されたことを知らないまま、美術品の贋作作りにまつわる小説を読んでいました。さすがに今度の仏像が贋作だとは思わないけれども。
- 作者: 黒川博行
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/05/10
- メディア: 文庫
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人いきれだけではなく物いきれもするというか、人間の情念が濃ゆく残っている美術品を巡って金儲けを目論む人間がわんさか出て来るので読んでいて少々息苦しかったです。美術売買が本当にこんな世界だとしたらとてもじゃないけれど自分は生きていけない…。但し、玄人が玄人を化かすのは上等でも素人に贋物を売ってはいけない。もし売ったことが知れた場合は金は全て返さなくてはいけない。そういう約束事は何度も繰り返されています。
なお、この本でも宗教団体の美術品売買については触れられていますが、他で読んで個人的に忘れられない話をひとつ。
被差別部落出身ながら自民党幹事長まで登りつめた野中広務は当初創価学会を叩きに叩いていたと言います。しかし学会で出しているSGIグラフという雑誌、これには池田大作が数々の名画をバックにして世界の要人・知識人と握手をする写真がよく使われていたのですが、野中はこの写真一枚一枚を誰の何という絵か洗い出して学会の資産リストと全て付き合わせたのだそうです。そうすると一致しない絵が色々とある。こういうことを野中がちらちら学会の耳に入れたことで逆に学会がすり寄ってきた、そうです。その後の野中の豹変ぶりはともかくとして、そのやり方につい感心してしまったので強く印象に残っていますが、新興宗教団体と美術品は思った以上に深い関係にありそうです。