ウェヌスの頃


春だし前髪ぐらいは作ろうかと美容院に行ってきました。デジタルパーマは時間がかかるけれど、のんびり本が読めるのが嬉しい。今回は村田喜代子の『夜のヴィーナス』、女性讃歌の短編集とのこと。


夜のヴィーナス

夜のヴィーナス


ヴィーナスにまつわる二編は個人的にさほどだったけれど、「虚空」の底知れなさや「毒穴」での慄きぶりにははっとします。


なかでも「蟹湯」は中年の男女数人が同窓会で温泉に来ているところにシュミーズひとつで温泉に入りに来るおばさんの話題が平行して進むのだけれど、その結末がもうこれ以上考えられないほど鮮やかに閉じたので、一時もの思いにふけってしまったほどでした。


そんなこんなでくるくるした頭でため息つきつつ帰ってきてお弁当の支度をしました。玉葱と豚肉とで一緒に煮ようと、濡れて指先に吸い付くような塩蔵の若布を扱ううちにそうか若布っておんななのだなと一人で合点。この曲線はたとえ腰にまとっても違和感なくなじむんじゃないか。


そんなことばかり考えていたら、若布と玉葱の海に豚肉が泳いでいるような煮物が鍋いっぱいにできました。