『やさしい嘘』

古き良き時代に生きるエカおばあちゃん、挫折感についとげとげしくなる母マリーナ、未来も将来もない
グルジアに見切りをつけようとする娘のアダ。


そのエカおばあちゃん最愛の息子が亡くなった。マリーナは頑としてエカおばあちゃんに知らせまいと
する。そんな母に反発しながらも、引きずられるようにアダは息子のふりをして手紙を書き続けるが……


エカおばあちゃんを演じるのはエステール・ゴランタンという90歳にも手が届こうという女性で、何でも
85歳でデビュー、その後も出演依頼が絶えないのだそうです。でも、この方には女優という肩書きは
似合わない気がします。猫可愛がりされるだけではない、我が強くて周囲にちょっと手を焼かせる
エカおばあちゃん役がぴったりでした。


両手を空にかざすことで祈りになる。
たとえ林檎が腐っていても、手をのばさなければ齧ってみることもできないのだから。



以下ネタバレします。







最後は『やさしい嘘』という題名にうなりました。
母がついた「やさしい嘘」を再度祖母と孫がつく、というのは皮肉にも思えますが、エカおばあちゃんが
最後に選んだのは娘のマリーナだとも言えるかも。
雑誌売り場で所在なげなアダ、アダの決心を知り泣き崩れるマリーナ、マリーナを支えつつアダにキスを送るエカおばあちゃん…この流れが自然で優しく、涙が出ました。